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2024年03月号-1 |
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赤字の老健 4 割超に増加 22 年度 |
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福祉医療機構 |
全国 1,562 カ所の介護老人保健施設(老健)の 41.6%が 2022 年度決算で赤字だったことが、福祉医療機構のリサーチレポートで明らかになった。人件費率や経費率の上昇により事業利益率が低下したことで、赤字施設の割合が前年度から 7.9 ポイント増加。機構では、著しい経営悪化の状態が続いているとし、「利用率を高めて費用に見合った収益を確保していくことが経営改善には欠かせない」と指摘している。
●各類型も老健全体と同様の傾向
機構は、貸付先の 1,562 カ所の老健から報告があった 22 年度決算のデータを使って経営状況を分析した。それによると、1,562 カ所の老健の事業収益に対する事業利益の割合(事業利益率)は 0.8%で、21 年度から 2.1 ポイント低下した。 施設の利用率は、入所が 0.3 ポイント低下の 87.7%、通所では 0.7 ポイント低下の 61.0%となった。一方、入所単価は 1 万 4,345 円と 103 円上昇した。 費用面では、事業収益に対する人件費の割合(人件費率)は 62.4%で 0.7 ポイント上昇。介護職員らの処遇改善が進められる中で、従事者 1 人当たりの人件費が 9 万 8,000 円上昇したことが影響した。 事業収益に対する経費の割合(経費率)は、1.3 ポイント上昇の 21.6%。このうち、水道光熱費率が 4.8%と 0.9 ポイント上昇した。 機構は、21 年度と 22 年度で比較可能なデータがある同一施設を抽出。それを、▽基本型(324 施設)▽加算型(365 施設)▽在宅強化型(127 施設)▽超強化型(324 施設)▽その他型(26 施設)▽療養型(13 施設)−の施設類型ごとに経営状況を分析した。その結果、22 年度の事業利益率は全ての類型で低下し、在宅強化型とその他型にいたってはマイナスに転じた。 また、ほとんどの類型が老健全体の傾向とほぼ同じで、入所単価は上昇したものの利用率が低下したため、入所定員 1 人当たりの事業収益は「横ばい」か「やや低下」となった。その上、人件費や経費が増加したことで減益となった。 機構は、「施設類型によらず経営状況が悪化している」と指摘している。
●通所介護事業所は約半数が赤字
通所介護事業所については、全国 5,744 カ所の 49.6%が 2022 年度決算で赤字だった。赤字事業所の割合は前年度から 3.1 ポイント上昇。利用率は 2.0 ポイント低下の 68.0%となり、コロナ禍初期の利用控えなどによって低下した 20 年度の水準を下回った。事業所の登録者数も 72.1人と 21 年度と比べ 5.6 人減っており、機構は「利用者の確保が経営課題」だと指摘している。 リサーチレポートでは、貸付先の 5,744 の通所介護事業所から報告があった 22 年度決算のデータを使って経営状況を分析した。その結果、本業の利益率に当たる「サービス活動増減差額比率」は 0.0%で、21 年度から 1.5 ポイント低下した。一方、利用者 1 人 1 日当たりのサービス活動収益(利用者単価)は 9,475 円で 254 円上昇。その一因として、「22 年 10 月に新設された介護職員等ベースアップ等支援加算の影響が大きい」と機構はみている。 利用者の単価は上昇したものの利用率が低下したことで、定員 1 人当たりのサービス活動収益が低下し、減収となった。 費用では、昨今の物価高騰の影響により「水道光熱費率」が 5.3%と 0.8 ポイント上昇した。 機構は、事業規模区分別の経営状況も分析した。赤字の事業所は、「通常規模型」では52.3%と半数を超えた一方、最も低い「大規模型(T)」は 32.5%で、双方に 20 ポイント近い開きがあった。 また、利用率は「通常規模型」が 66.5%と最も低く、「大規模型(T)」の 72.7%と 6 ポイント以上の差があった。 |
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