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2012年06月号-2
医療機関の損税問題への対応、検討開始
〜厚労省・分科会が初会合
 厚生労働省は20日、診療報酬調査専門組織の「医療機関等における消費税負担に関する分科会」(分科会長=田中滋・慶大大学院教授)の初会合を開き、2014年4月の消費税率引き上げに向け、診療報酬の非課税措置によって生じる医療機関の損税問題の対応の検討に入った。同省では今後、消費税課税の実態調査を行う方針で、その結果を踏まえ、12年度後半に中間整理を取りまとめた後、13年度中に8%引き上げ時の対応を決定する見通しだ。
 現在、診療報酬は消費税の課税が認められていないが、医薬品や医療機器などの仕入れ費用は課税対象となっているため、その分の税金が医療機関などの「損税」となっている。国は消費税が導入された1989年と、5%に引き上げた97年に診療報酬改定を行い、損税分を上乗せしたと主張しているが、2000年から診療報酬のマイナス改定が10年間続いたことから、病院団体などは「補てん分が不明確だ」と反発している。
 同分科会の開催は、「医療機関等の消費税の負担について、厚労省において定期的に検証する場を設ける」とする社会保障・税一体改革大綱を踏まえたもの。中央社会保険医療協議会や医薬品・材料の関係団体などに所属する18人の委員で構成されている。
 初会合で厚労省は、「消費税率の引き上げに当たり、医療機関等の行う高額の投資に係る消費税の負担に関する措置をはじめとする所要の措置等について検討を行う」と説明。検討内容として、▽消費税導入時や診療報酬改定時の対応や経過の検証▽医療機関などの消費税課税等の現状把握▽消費税引き上げに対する診療報酬制度等における対応―の3項目を示した。
 また、今後の消費税課税の実態調査については、調査専門チームで具体的な内容を検討するとする一方、高額投資の消費税負担に関しては、一体改革大綱で「新たに一定の基準に該当するものに対し区分して手当てを行うことを検討する」と明記されていることから、社会保障審議会の医療保険部会での検討も視野に入れるとした。

■非課税措置の「矛盾点」の指摘相次ぐ

 委員からは、非課税措置によって生じる損税分を診療報酬で補てんした「矛盾点」を指摘する意見が相次いだ。
 今村聡委員(日本医師会副会長)は、「患者さんに税の負担をさせないために非課税となっているが、診療報酬の中で負担するということは、結局その分を患者さんは負担している」と発言。現状では診療報酬への上乗せ分が不明確として、非課税措置に関する患者の現状認識も合わせて調査するよう求めた。
 また、白川修二委員(健康保険組合連合会専務理事)も、「ある意味で、国民をだましているのではないかと言いたくなるような仕組みだ」と同調し、今回の消費税率引き上げ以降の将来的な在り方についても、同分科会で提言する必要性を示した。
 一方、西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)は、「根底から見直す時期に来ている」と述べ、過去の診療報酬改定時の検証と、消費税課税に関する現状把握を優先的に行うよう要望。堀憲郎委員(日本歯科医師会常務理事)は、「はっきりと補てんの部分が分かるように、例えば、基本診療料に、加算として一括して補てんするような対応が望ましいのではないか」と指摘した。

■非課税要求、日医が“反省の弁”

 診療報酬の非課税措置をめぐっては、消費税導入時に日医の要求によって実現した経緯がある。この日の会合で今村委員は、「ゼロ税率と非課税の違いもよく分からない中で、患者さんの医療に税の負担をさせないということに強く配慮して、そのように主張したと理解している」との認識を示した。その上で、「(一時的にとりつくろう)弥縫策のような形で進めることは本当に良くないのではないかと思っているので、真摯に議論させていただければと、反省を含めて申し上げたい」と述べた。

2012年06月号-1
介護新サービス実施意向の訪看は1割強
〜全国訪問看護事業協会が調査
 今年4月に導入された定期巡回・随時対応型訪問介護看護(24時間訪問サービス)や複合型サービスを実施する意向がある訪問看護事業所は、全事業所の1割強にとどまることが14日までに、全国訪問看護事業協会の調査で明らかになった。看護師不足などが影響しているとみられるが、関係者の間からは、このままでは2012年度介護報酬改定の基本方針に掲げられた「地域包括ケアシステム」のコンセプトそのものが揺るぎかねないとの声も上がっている。
 24時間訪問サービスは、訪問介護と訪問看護の両サービスを、日中・夜間を通じて定期巡回訪問と随時の対応によって提供する。また、複合型サービスは、小規模多機能型居宅介護と訪問看護のサービスを一体的に提供するもので、いずれも看護の関与が不可欠。
 全国訪問看護事業協会は、新サービスの実施状況について3681か所の訪問看護事業所を対象に、5月11日から28日にかけてアンケート調査を実施。1981か所から有効回答を得た。
 このうち、24時間訪問サービスの実施状況は、「実施する意向はない」が52.4%で最も多く、以下は「まだ考えていない」(33.7%)、「実施したいと考えているが具体化していない」(10.4%)、「実施する計画がある」(2.2%)、「実施している」(1.0%)と続いた。実施しているか実施する意向がある事業所(「実施している」
 「実施する計画がある」「実施したいと考えているが具体化していない」の合計)は、全体の13.6%だった。
 複合型サービスの実施状況では、「実施する意向はない」が46.8%で最も多く、以下は「まだ考えていない」(38.6%)、「実施したいと考えているが具体化していない」(9.2%)、「実施する計画がある」(2.0%)の順となった。「実施している」事業所はゼロで、実施する意向がある事業所は全体の11.2%だった。
 新サービスに取り組む意向がある訪問看護事業所が1割強にとどまっていることについて、全国訪問看護事業協会では、「大きな要因として、看護師確保の難しさとサービス運営に関する情報の不足が挙げられる。特に、利用者を受け入れる施設が必要な複合型サービスについては、費用がかさむことも影響しているのではないか」としている。
 
 淑徳大の結城康博准教授の話

 「いずれのサービスも、このままでは十分に機能できない。しかも、いずれも地域包括ケアシステムの中で重要な役割を担っているだけに、このままでは、地域包括ケアシステムのコンセプトそのものが揺るぎかねない。今後、少なくとも全事業所の3−4割が参加するくらいの状況までもっていく必要があるのではないか」

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